点心で使う粉、粉の性質を見極める


コースターチで糊化させたトルコのお菓子、Firin Sutlac(フルン・スュトラッチ)



点心で使う粉の話です。
日本で販売されている粉と本場中国、台湾で販売されている粉は少々違うため、代用するには少しばかりの知識が必要となります。




『粉』といっても、薄力粉や強力粉、中力粉、デンプン粉としては、タピオカ粉、コーンスターチ、片栗粉など色々な粉があります。
珍しいところでは、蓮粉や、生姜粉。

生姜粉は、随分前に流行った「大長今(チャングムの誓い)」という韓国ドラマの中で、主人公が料理の実技試験で意地悪をされて、代用したのが生姜のデンプンだった記憶があります。



和久傳 西糊


蓮のデンプンは、京都の和久傳のお菓子『西湖』の材料としても有名で、そのつるんとした喉越しは、夏に近づくと食べたくなるお菓子の代表格です🎐


では手始めに、身近なとろみを付けるために使う粉から。


とろみを付けるのに使われる粉としての代表格は片栗粉、そして、ちょっと通な粉として浮粉やコーンスターチがあります。

これらの粉は何が違うのか?と言えば、それは、糊化(粘りが出ること)の速さやその強さ、そして離水率です。その他、味や見た目にも差が出ます。


たとえば、カスタードクリーム。
少し古いレシピ本だと小麦粉を入れるレシピが多いのですが、現在のパティスリー界ではコーンスターチを使うことが多いそうです。分量としては、コーンスターチ1に対し、小麦粉1。又はすべてコーンスターチを使用する場合もあります。使う理由は食感や味、そして見た目です。
実際、コーンスターチのみでカスタードクリームを炊いたことがありますが、小麦粉よりも食感がプルンとして、味的にも粉気が少ないので、コーンスターチを使うことはオススメ!

またコーンスターチは冷めても凝固を維持できるので、アメリカのレシピのチョコレートパイやTurkish pudding(フルン・スュトラッチ)、ブラマンジェなどの冷やして食べるスイーツなどで使われています。
食感も先ほど述べましたように、プルンとしていますので、デザートにもピッタリ🍮


次に片栗粉ですが、いつも料理をしていてトロミ付けたはずなのにだんだんと水っぽくなってしまうこと、多くありませんか?

片栗粉は熱いまま食べる料理に向くとはいうものの熱いまま食べ続けることは出来ないわけで、使用方法に注意しないと、冷えてくると水っぽくなりがちなんです。この現象を離水といいます。

欠点が目立つ片栗粉でも、ポイントを押さえれば冷えても糊化が続いた状態に出来ることは出来ます。片栗粉の利点は、安価でどこでも手に入ることと、その“艶”です。


では、「水っぽくなりたくないんだけど・・・」というときその代用として何を使えばいいか、ということですが、それは、浮粉もしくは葛粉です。浮粉とは、小麦粉のデンプンです。


葛を使うご家庭は稀かもしれませんね。
葛粉は葛菓子に代表されるように非常に糊化する力が強く冷えても離水しにくいのが特徴です。
(厳密には時間が経てば離水はします。寒天でも同じで、寒天で固めた羊羹が水っぽくなることを”羊羹が泣く”と言います)

粉としては、場所によっては手に入り難く価格も高いため、手軽に使えるものと言えません。しかし、料理によっては最高のパフォーマンスを発揮します。例えば皿うどんをしたとしても最後までしっかりした餡のままいただくことが出来ますから、タダでさえ細い麺がベチャっとなることが少なく食感を保ったまま食べ終わることが出来ます。
わたしが今現在中華を作るときにとろみを付ける必要があるときは、正しい方法で使用する片栗粉か、葛を使っています。


日本料理でとろみを付けるときは、透明感、とろみの強弱の付けやすさ、離水の遅さ全てにパーフェクトな葛粉でとろみをつけるようにしています。日本料理は繊細な料理ですから、葛は欠かせません!艶共に最高!!


じゃあ、浮粉はどうなの?という疑問が出ますが、浮粉も離水率が低く、しっかりとろみがつきます。しかし、欠点があり、それは艶感が上記の2つに比べ劣り、白っぽくなってしまうことです。
その白さが分からない料理であれば、比較的安価で購入できる浮粉を使うのも手ですね。


ただやっぱり料理にはシズル感も大切なので、吟味した粉を使うのも料理が上達する方法の1つであると思います。


他の粉・・・在来粉やもち米の粉、白玉粉など色々な粉がありますが、これも、糊化する温度や食感など色々と条件が変わってきます。
例えば60℃くらいから糊化を始める粉もあれば、60℃でも糊化しない粉もあります。温度やショックを加えることで食感が増す粉もあります。


一つ一つ書いていけば限がないので、点心でよく使われる粉の特徴をざっと書いておきますね。
(わたしが調査したもので異なっている部分があるかもしれません。判明次第加筆修正していきますね)



  • 在来米粉・・・在来米とは、日本ではインディカ米と呼ばれている米を粉にしたもの。台湾では一般的に食べられているお米。日本の米よりも長さがあり粘りが少ないのが特徴。うるち米の粉である上新粉で代用するように書かれていますが、そもそも米の性質が違うため、異なった仕上がりになる。ネットでも購入できるので、購入するのもアリ。大根餅に使う粉。
  • 片栗粉・・・馬鈴薯(じゃがいも)でんぷんです。これはよく使う粉ですね(上記参照)
  • 浮き粉・・・中国語名:澄麺粉。小麦粉でん粉です。最近ではちょっとリッチなスーパーでも見かけるようになりましたね。点心ではよく使われる粉で、半透明の生地に仕上げる時に使います。有名なところでは海老餃子(蝦餃)、大根餅、腸粉など
  • 糯米粉・・・もち米を加工した粉。もち粉(求肥粉)もしくは、白玉粉で代用出来ます。白玉粉の方が製造に手間がかかっている分高価ですし、味も洗練されています。
  • コーンスターチ・・・とうもろこしのでん粉。玉米淀粉などと呼ばれています。冷めても離水しにくいので、デザートにも使用できます(上記参照)
  • タピオカ粉・・・珍珠奶茶(タピオカミルクティー)に入っている丸いボールがタピオカ粉から出来ています。モチモチとした食感が特徴で、その特徴からベトナムの麺にも配合されていたりします。



とろみを付けるだけでなく、衣として揚げたりするときでも食感は変わってきますので、粉の性質を見極めることがいかに重要かがお分かりになりますでしょうか🙋


鶏の唐揚げの衣にする粉ですが、小麦粉を使う場合も多くあるかもしれませんが、個人的なおすすめは片栗粉か上新粉です。カリッと揚げるには欠かせない粉です。使われたことがない方は、ぜひ使ってみてください!
(フライドチキンを揚げる時は小麦粉の方がフライドチキンっぽく仕上がると思いますけどね🍳)







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